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2004.03.12

●「竜馬がゆく」と「翔ぶが如く」と「坂の上の雲」

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司馬遼太郎の「竜馬がゆく」と「翔ぶが如く」を読みました。
通勤の電車の中、出張等々細切れの時間をずいぶんと長い期間楽しませてもらいました。学生の時に「坂の上の雲」を何度か読んでいたので、読む順序は時代の流れの逆になりました。また、「坂の上の雲」もそうですが昭和史を扱ったエッセイで近代日本史に対する司馬の思いをある程度読んでいたので、単に歴史をなぞった読み方にはなりませんでした。
「坂の上の雲」や随筆集「歴史と視点」などによると、司馬は日本民族を滅亡のふちにつれていった旧日本軍(特に旧陸軍)に対して激しい気持ちをいただいており、明治期に偉大であった日本国の指導者層(軍関係者含む)の後継者たちが、昭和期になって非合理的なひとびとに引きずられ、また迎合していったことに強い関心があったようです。

リンクでも紹介してる「圏外からのひとこと」の中の方も下記のように述べられています。

-ここから引用-
日本は、合理性と非合理性のブレが大きい国だと思います。

明治維新から日露戦争までは、日本は合理的な国でした。日本の一番の優先事項は攘夷だと思います。これは江戸時代から現代まで一貫してそうだったと思いますが、明治維新とは「合理的な攘夷」に向けての改革だったのではないでしょうか。外国を追い出す為に、欧米の社会システムや学問を取り入れ、一部の欧米の国(イギリス)とも同盟をむすんだのです。それが合理的な行動であって、唯一の方法でした。

それによって日露戦争に勝利して独立を確固たるものにしたのですが、あまりにも過度な合理性には揺り戻しがつきものなのか、その後は、合理的とは言いがたい方向に向かいます。

こういう司馬史観的な見方は最近いろいろ批判されているみたいですが、
-引用ここまで-

こういう視点で「竜馬がゆく」の”志士的攘夷論”や「翔ぶが如く」の”征韓論勢力”の描写を読んでいると、ところどころで昭和期の膨張主義とのつながりを示唆していることが目に付きます。

ただし、非合理性を嫌悪し批判すればそれで片付くという話ではないというのも大事なところです。
人間には必ず非合理的な部分があることは事実で、集団になってもそれは変わりません。集団になって非合理性が薄まるかエスカレートさせられてしまうかは様々な要素に左右されますが。
「竜馬がゆく」「翔ぶが如く」の中では、数的には非合理性のほうが時代の大勢であり、その流れに翻弄されつつも合理性を追及しようとするひとびとを描いているように読めます。「坂の上の雲」では不利な条件のもとで必死に合理性を追求しようとするひとびとがいます。
誰もがそのような「英雄」たちのように行動できるとは思いませんし、そのような「英雄」たちの陰にも陽にも発揮される強烈な個性を読むと、例えば自分のような常識人(笑)は時代からも環境からも非合理性からも逃れられないのだろうと思います。

現在の(昔もですが)マスメディアや広告は人々の非合理性に訴えることで売上を伸ばします。それは合理性に訴えるよりも効果的である事が多いので、マスメディアが互いに競争関係にある以上は正しいふるまいですが、受け手にとっては困ったことです。(勿論、非合理性に訴えてもらってカタルシスを得ることを望む人もたくさんいるでしょうが。)
幸い現在はインターネットを用いて、マスメディアの論理からは外れた考え方がいくらでも入手できます。それが発する源は、良心であったり義侠心であったり差別心であったり抑圧感であったり「祭」を好む心だったりと必ずしも合理性だけではありませんが、マスメディアの論理だけよりもよほど健全だと思います。

この文章に結論はありません。強いて言うならば、司馬遼太郎の超有名なこの3小説は楽しいよと、それだけでなくて司馬の問題意識を知って読むともっと面白いかもということです。
竜馬をはじめ幕末の志士たちの血の中(新撰組なんかは暗殺者集団・テロリズム集団だそうです)から生まれた太政官政府の右往左往ぶり。強烈な地方分権制であった藩閥体制と「官」と呼ばれた新生日本政府の確執。士族軍(薩軍)対百姓軍(政府軍)の戦い。強くなった政府軍(日本陸軍)が満州の平原と旅順要塞で陸軍大国ロシアと決戦を行うところまで、すんなりと読めてしまいました。
それから司馬遼太郎の文体の乾いたユーモアがむっちゃ好きだなぁと。自分が「坂の上の雲」とか何度も読んでしまうのは物語よりもそっちを楽しんでいるのだと思う。

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